老年心理学その弐〜フレーミング効果〜

こんにちは。
May's + 海野です。

 

前回の記事で『老年心理学』が意思決定に大きな影響をもたらす、というお話をしました。

まだご覧になっていない方、読んだけど忘れてしまったという方はご参考までに。

詳細は記事を読んでいただくとして…。
歳を重ねるごとに、思考の偏りによって顕著に表れる行動についても触れています。

 

その中から、今回は『フレーミング効果』についてお伝えしていきますね。
普段の生活の中でも「あ、あるある!」と思えるようなことでもありますので、今後の参考としていただけたら幸いです。

 

 

まずはここから!フレーミング効果とは?

 

さて、フレーミング効果とはいったいどのようなものなのでしょうか?

 

フレーミング効果は、行動経済学者のダニエル・カーマンさんと心理学者のエイモス・トヴェルスキーさんが、1981年にアメリカのサイエンス誌という学術誌で発表されました。

ダニエル・カーネマンさんはこのように説明しています。

問題の提示の仕方が考えや選考に不合理な影響を及ぼす現象

引用:ダニエル・カーネマン著 村井章子訳 早川書房
   「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?(下)」

本質は同じ意味を持つ選択肢であっても、表現方法(フレーム)の違いによって受け手の印象が変わり、意思決定に大きな影響を与えるという心理現象がフレーミング効果です。

 

では、なぜフレーミング効果は起こるのでしょう?
前述のお二人が、1979年に提唱した「プロスペクト理論」の中で次のように説明しています。

人間の価値には偏りがある

利益が出ているとき→確実性を好み、損失を避ける
損失が出ているとき→リスクを負ってでも利益を求める

 

具体的な事例をみてみましょう。

事例1
A.冷蔵庫の電気代は年間で7,300円です。
B.冷蔵庫の電気代は1日たったの20円です。

パッと見たとき、どちらが安く感じますか?
おそらく、Bと答える方が多いのではないでしょうか?

どちらも同じことを言っているのに、なぜなのでしょう?
それは、年単位の表現より1日単位の表現の方がイメージしやすいからなんですね。

 

では次の例ではどうでしょうか?

事例2
A.新型の冷蔵庫は旧型に比べて電気代が年間3,650円も安くなります。
B.新型の冷蔵庫は旧型に比べて電気代は1日あたり10円安くなります。

いかがですか?
先ほどの例とは逆に年間で表現された方が安さを実感できるのではないでしょうか?

この表現方法、家電屋さんのポップや店員さんの説明などで見たり聞いたりしたことがありませんか?お客様により高い購買意欲を持ってもらうために、フレーミング効果を活用している事例ですね。

 

もう一つ事例を紹介しますね。

事例3(どちらが危機感を感じますか?)
A.がんを早期発見できれば治療の幅が広がります
B.がんを早期発見できないと治療が難しくなります

この例は実際にアメリカのブーナン・ケラーさんという大学の教授が行った実験です。
Bの表現の方が検診を受ける人が多かったという結果になりました。

 

この事例から、人は損失(恐怖や不安)を避ける傾向があるためネガティブな表現方法を用いた方がインパクトが強いということがわかります。

 

同じように医療品や健康食品などでも、損失を強調した宣伝方法が用いられるケースもよく見かけます。

 

 

高齢者はより顕著に行動に表れる?

 

フレーミング効果についてお伝えしましたが、いかがだったでしょうか?
こうして見ていくと、普段の生活でも「あ、あるある!」と思うことないでしょうか?

折込チラシやテレビショッピング、店頭での説明などなど。

 

残念なことに高齢者をターゲットにする詐欺まがいの行為もこうした心理現象を利用したものが多いのではないか、と感じます。

歳を重ねると恐怖や不安を感じやすくなります。
また、損をしたくない…という思いも強くなるように思います。

 

ですが。
これらはなにも高齢者に限ったことではない、ということは申し添えておきます。

 

大なり小なり意思決定をする時にはご自身の考えだけで決めるのではなく、ぜひまわりの方の意見にも耳を傾けてください。

 

人は誰でも思考の偏りはあるものです。
人間の心理って不思議で、難しいものです。

 

終活に取り組む際、保険の見直しや老後の生活資金、これからの過ごし方を考える時にぜひ参考としていただけたら嬉しいです。

 

表現方法に惑わされ、偏った考え方で誤った選択をしないように心がけたいものですね。